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COMMONS CAFE <コモンズカフェ>

開催日:2014年06月25日

[第6回]同志社大学 理工学部 馬場吉弘「グリーンエネルギー風力発電の可能性」

2014年6月25日、第6回目のコモンズカフェが開催されました。

今回は実験的に出張コモンズカフェとして、京田辺キャンパスのローム記念館で行いました。理工学部、文化情報学部から12名の学生さんが参加されました。

本日のテーマは「風力201406251発電」。理工学部の馬場吉弘先生から「グリーンエネルギー風力発電の可能性」というタイトルでお話しいただきました。東日本大震災以降、このテーマは非常に重要です。

ホストによるコモンズカフェの趣旨説明および馬場先生の紹介の後、馬場先生のお話がはじまります。そもそもエネルギーというのには様々な形態があり、電気、運動、光、熱、核エネルギーなどさまざまなものがあります。以前は「発電工学」という名称であった学問は、最近では「エネルギー変換工学」と呼ばれることが多くなっています。

最初に、発電の基本的なお話をしていただきました。石油やガス等を燃やすと熱が発生します。その熱で水を沸かし、圧力蒸気にし、その力でタービンを回します。タービンには発電機がつながっており、発電機内のコイル中での磁石の回転により、電気エネルギーが発生します(ファラデーの電磁誘導の法則)。原子力発電も同じことを行っています。ウラン235原子が分裂するとき、質量欠損分のエネルギー(アインシュタインのE = mc2ですね!)が発生します。このエネルギーが熱になり、これで蒸気を作りタービンを回します。ウラン1 g(ウランは金と同じくらいの比重なので、とても小さい体積です)は石油2tと同じエネルギーを生み出すそうです。原子力発電は1 kWあたり9円ほどで、安く電気を供給でき、それが日本の経済発展を支えてきました。

「そもそもなぜ様々な201406252エネルギーを電気エネルギーに変換するのでしょうか?」と馬場先生は参加者に問いかけられます。様々な理由はありますが、「輸送が容易なこと」が主たる要因としてあげられるそうです。送電線はあの細さでも大量のエネルギーを輸送することが可能です。石油なら石油タンカー、ガスなどであればパイプラインが必要ですが、電気エネルギーなら光速で、大量に過不足なく工場や家庭まで送ることが出来ます。また、電気エネルギーは他のエネルギーへの変換が簡単です。照明器具で光に、電熱器で熱に、モーターで回転力に …と、他の形態のエネルギーに容易に変換できるという利点があります。

しかし、東日本大震災をきっかけに状況は変わりました。現在、原発がなくとも何とか電力会社は電力需要に対応しているように見えますが、実は効率の悪い、古い火力発電所を無理やり動かしています。そうなると発電原価が高くなり、日本のお金が産油国等、海外に流出している状況になっています。また、石炭や石油はいつかなくなります。石油については、昔も今も埋蔵量はあと50年(と不思議なことが言われているそうですが、これは探査技術や採掘技術が進歩し、新しい油田が発見されたり、深い地層にある油田の採掘が可能になってきたことが背景があります)です。ただ、それでも石油や石炭はいつかなくなります。だからこそ、省エネの技術が必要になります。20年位前のエアコンと今のエアコンはおおよそ倍くらいの効率になっています。バッテリー(電池)もそうです。他にも、ノートパソコンなども低消費電力化が進んでいます。

そこで注目を集めているのが「非枯渇性」エネルギーを利用する風力発電、太陽光発電、地熱発電等です。例えば、昼と夜では温度差が生まれます。温度差が生まれると大気の圧力の差が発生します。その圧力差を緩和させるために風が起こります。太陽が照っていて、大気がある限り(そして地球と地球表面の大気があるかぎり?!)、風は発生し続けます。風の力で風車を回し、その回転力をエネルギーに変換させる仕組みが風力発電となります。

もちろん極端な考え方として、今ある科学技術を全部捨ててしまって、エネルギーに依存しない生活を送ることも考えられます。しかし、それは山で一人あるいは少人数で0円生活をするといった方法になってしまい、多くの人々の生活としてはあまり現実的ではありません。弥生時代、キリストが生まれた頃の地球の人口は2億人。その後1000年間で人口は3億人。つまり1.5倍にしか増えていません。1769年の産業革命の後、1800年に地球の人口は10億人、1900年で20億人。現在70億人くらいになっています。最終的には120億人ぐらいまで増え、飽和する見込みだそうです。現在、世界中の農地を世界の人口で割ると、一人あたりの農地の面積は30メートル四方らしいです。全然足りません。しかし、人口はこれからも増えていくので、「山ごもり」は一人では可能かもしれませんが、みんなでは昔の生活には戻れない。だから、非枯渇性エネルギーの積極的利用、省エネ技術の開発そしてエネルギーの節約利用が重要になってくるのです。

風力発電設備は、今や石油や石炭とコスト的に競争可能な領域に入ってきています。風力発電の1キロワット時(kWh)のコストは20~30円ほどで、石油、石炭よりは若干高いのですが、それらと競争できないという額ではありません。全世界の風力発電を全て集めると、原発160基分くらいになるようです。導入量でいえばアメリカ、中国、ドイツが多い模様です。とくにデンマークは全電力の30%を風力発電で賄っています。次いでポルトガルは20%。一方、日本は全電力のうち風力発電の占める割合は0.4%程度にすぎないのです。グリーンエネルギー政策を推進している国ではグリーンな電気を高く買い取るインセンティブをつけているようです。買い取り価格を高くしすぎても破綻しますが、うまくバランスを取っている国はあるようです。

最後に、エネルギー問題の重要性について、「グリーンエネルギーの積極的利用、省エネ技術の更なる開発、そして夏のエアコン設定温度を28℃に設定するなどのエネルギーの節約利用が重要です」とまとめていただきました。

201406253後半は質疑応答です。参加者の皆さんを見渡し、「答えはみんなで考えましょう」、という馬場先生からのコメントから後半がはじまりました。例えば、デンマークは風力発電を大量に運用しているが、なぜ日本ではこれほど進んでいないのか、という質問がなげかけられました。理由としては、デンマークと日本の人口規模の差(約20倍)によって、日本の場合は風力発電電力が増加しても、割合として目立たないという特性があるようです。

また、土地はたいてい誰かの所有物ですが、もしかしたら、デンマークでは漁業関係者との交渉が良好に進み、海上への風力発電装置の設置が容易であった可能性があります。デンマークには安定した偏西風も吹いています。一方、日本の場合は台風や雷によって破損被害があり、運用が困難な問題もあるようです。風車の羽は2つの制御をしており、風車の全体が風の方向へ向けること(扇風機における首振り運動ですね)と、羽一枚一枚が風に対する角度を変える制御があるようです(これは普通の扇風機の機能にはありませんね…。ヘリコプターのローターの機能みたいなものでしょうか)。風が強すぎると、それを受け流すように風車は一枚一枚の羽を傾けますが、それでも台風のような強烈な風に対しては、壊れてしまうこともあるため、風を受けにくくして停止させるそうです。「デンマークと異なり、風の強弱にメリハリがありすぎる」とのことです。しかし、破損被害への対策は現在では進んでいるようです。

送電時のロスを考えて、離島への電力需要に風力発電は活用できないのか?という質問に対しては、コストを勘案し、海峡横断架空送電線を建設するか、海底ケーブルを敷設し、本島から電力を送るか、島に小型火力発電所を設置するかを判断しているのではないか、と先生はおっしゃいました。今のところ風力発電は風が止まると電力の供給ができなくなるため、風車だけでの安定した供給は難しいようです。

また、我々の家庭で使っている交流の電流には「周波数」があります。東日本は50Hz、西日本の60Hz。世界的にはほとんどが50Hzだそうです。交流が波々(~~~という形ですね)のSin波になるのは、発電は「回転」だからです。この回転運動を横軸に時間で取ると、Sin波の形状になります。この周波数の変動はほとんど許されないのですが、各瞬時での私たちの使用量が発電量を超えると、発電機の回転力が落ちてくる(=周波数が下がってくる)のだそうです。

では、どこかに電気を貯めておいて、需要の多い時にそれを流せばいいと考えられますが、なかなかそうはいきません。大容量の電池は高価で開発が難しいのです(電気自動車はすでに実用に域に達していますが、バッテリーが高価なため、広く普及するには至っていません)。そこで、発電所では我々の生活リズムに合わせ、皆の消費電力を、周波数をモニタリングしながら発電し送電線に電気エネルギーを送り出しています。しかし風力発電は、デンマークのようにいくら安定した偏西風を使っていても風力出力の変動が起こり得ます。そのため、バックアップのために他の安定した大型の発電源を持っている必要があります。デンマークの場合は、実は、隣接他国の送電線と繋ぎ、風力出力の変動を受け止めています。

201406254先生が最後のほうにぽろっとおっしゃった、風力発電の技術について、「人間なので毎年同じ失敗ばかり繰り返すはずがない。失敗を分析し、対策や新技術の開発につなげていく。そうやって一歩ずつ良くなっていくのではないか」、という言葉が心に残りました。

今回のコモンズカフェは、理工学部の先生ならではのトークが大変印象的でした。参加者にはいわゆる「文系」学部の学生もおられましたが「わかりやすかった」「おもしろかった!」というコメントが運営側に多く寄せられました。先生のトークには何一つ難しい数式は出てきません。実際の数値と平易なロジックを積み重ね、「ああ、なるほど!」と参加者が分かるようなストーリーは圧巻でした(プレゼンテーションのお手本ですね!)。また、学生から寄せられる質問に対して、決して「正しい答えを教える」という姿勢ではなく「君ならどう考える?」とやさしく問いを投げ返されていたことも印象的でした。参加者の皆さんもその問いを見事に打ち返していて見事でした。ある特定の技術を盲目的に素晴らしいと絶賛するだけでなく、メリットとデメリットをしっかり見極めつつ、そのメリットを伸ばしていくという言葉もつよく印象に残りました。

このコモンズカフェの様子は、今出川キャンパスのラーニング・コモンズ3F「アカデミックサポートエリア」でも同時配信されました。京田辺の音声と動画を今出川でも視聴することができました。今出川で見ていた方々も、馬場先生のわかりやすいお話に聞き入っていました。ただ、その場の臨場感を共有することは難しく、対話もできなかったので、そこは残念でした。やはり、コモンズカフェはライブ感が大事ですね。とはいえ、初の試みをしてみることで、微力ながらも「新しい風」を吹かせることができたようにも思います。

長文でしょうか?この記録、実は1000文字以上原文から削っているんですよ!その場に参加することで得られる濃密なコミュニケーション。分野横断型イベントのコモンズカフェ、次回はどんな先生が登場するのでしょう。ご参加をお待ちしています。お楽しみに!

<文章 岡部(メモ:阿部・大谷・浜島)>

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