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COMMONS CAFE <コモンズカフェ>

開催日:2015年01月29日

[第10回]同志社大学 国際教育インスティテュート コーリン デービス「元留学生からみた日本の14年」

第10回 コモンズ・カフェ開催記録

<はじめに>

 2015年1月29日に第10回コモンズ・カフェが開催されました。

 ILAデービス先生_1第10回のコモンズカフェは、国際教育インスティテュート(The Institute for the Liberal Arts)のコーリン・デービス先生をお招きしました。国際教育インスティテュートとは、さまざまな国や地域からの留学生と日本人学生が文系6学部を横断して学ぶ、同志社大学オリジナルの教育課程です。デービス先生はカナダのご出身の経済学者で、日本には大学院からこられ、これで14年目になるそうです。

 今回は先生が日本で、どのような経験をされたのか、どのような面白さがあったか、どのような大変なことがあったかを、時折ユーモアを交えてお話していただきました。

<日本への留学のきっかけ>

 日本では高校を出た後に大学にすぐ入学することが一般的ですが、先生は高校卒業後、ご自分のやりたいことを探す時間を過ごされていました。アルバイトをしながら、友達と数週間かけてカナダをドライブする、といったご経験をされていたようです。

 大学入学後、違う文化を学びたい!と考えたときに、大学で日本語が勉強できることを知りました。そこで姉妹校として提携していた日本の大学に留学し、三ヶ月ほどホームステイを経験したそうです。はじめての留学はカルチャーショックだったそうです。デービス先生、ホームステイの初期は、毎日疲れ果てて21:00にはすぐ寝てしまうような、そんな生活を送っていました。

<大学院で再び日本へ>

 留学から戻り、カナダで奨学金を得られる機会に出会ったデービス先生は、今度は日本の大学院に入ろう!と考えて北海道大学に入学しました。大学院の生活は、当初考えていたよりもカルチャーショックがなかったとのことです。院生のゼミに入り友達もでき、ゼミの中でディスカッションするうちに、日本人学生もデービス先生と同じように、理論経済学の学び方や、将来の進路はどうしたらいいだろう、と似たようなことを考えているとわかりました。コモンズカフェに参加した留学希望の学生さんへ「カルチャーショックなんてそんなに大きな問題じゃないよ!」と励まされていました。

ILAデービス先生_2 日本での留学中は「すべてが違う!」「すべてが刺激!」で面白かったようです。例えば電球が切れて、その買物をするだけでも大冒険。日常が冒険になることが刺激で、これを「とてもいいこと」とおっしゃっていました。でも疲れて21:00には寝てしまうのはご愛嬌。だから自分をリフレッシュする方法を身に付けることはとても大事だと先生はおっしゃいます。デービス先生の場合は映画を観に行くという方法を採用していたようです。

 別の言語を学ぶことについて「人格が2つできるようだった」とおっしゃいます。日本語を最初に勉強するときは丁寧語で学ぶ。だから丁寧に話すつもりじゃなくても丁寧になってしまう、とおっしゃって参加者の笑いを誘います。しかし、人格が2つできるようなことはとてもいい機会で、これまでの自分はどんな人間だったか、これから自分はどうなりたいのか、に繋げることができるとおっしゃいます。この2つの人格がだんだん重なっていって新しい自分ができる。大変だけれど、留学のとてもいいところだとおっしゃっていました。

<趣味と将来の選択肢>

 デービス先生の趣味の一つに「蕎麦打ち」があります。本屋で蕎麦打ち本を見かけた先生、蕎麦打ちセットを通販で購入して初挑戦(最初は「よくわかんないものができた」とのこと)。そこから、一番ハマっていたときは週3回ほど打っていたそうです。しかし、京都に引っ越してきてから、美味しい蕎麦屋がいっぱいあるので、最近はもっぱら外食だそうです(おすすめのお店も教えてもらえましたが、これは当日の参加者だけの特権です!)。

 最後に、ご自身の研究についてお話しいただきました。先生のご専門は理論経済学。数学を駆使する分野です。先生はご自身のキャリアを振り返ってこう言います。ある人にとっては、現在と将来はまっすぐな道かもしれないが、デービス先生は色々な寄り道をしたとのこと。事実、高校時代には数学がそれほど得意ではなかったとのことです(意外!)。

ILAデービス先生_3 それを踏まえてデービス先生はこんなことをおっしゃいます。「やりたいことができるようにするために、自分の選択できる道を多くすることです」。自分がやりたいことに、その選択ができる近い道をとる。こうしていると、自分が本当にやりたいことに近づいていけるよ、とアドバイスしてくれました。「今、自分が面白くないと思っていることでも、将来とてもおもしろいと思うかもしれない」。歳を取ってくると、「どんなものでも面白い」とデービス先生は言います。もし面白くないと思うときは、表面しか見ていないからなんだ、と。奥深い所を知ってこそ面白いんだ、今でもどんな分野も勉強したいんだ!なんて、ワクワクした声で前半の話を締めくくられました。

<カナダと日本のいろいろな違い>

 後半のディスカッションは留学を志望する学生や留学経験のある学生も参加し、とても盛り上がりました。ここではいくつかの質問と応答を抜粋します。

 「いつ2つの人格がひとつになっていくのか?」、という問いには、責任や決断に関して必要なことを言わなければならないとき、言いたいことを表現するときに人格が収束してくるのではないか、というお返事が。

 「日本の大学のアドバンテージとディスアドバンテージは?」という問いに対して、カナダの学部は入りやすいが、卒業しにくいことを指摘されました。

ILAデービス先生_4 また、カナダの大学院は決まった課題をどんどん解いていくようだが、日本の大学院は「自分が面白いと思っている課題」を解くことができるという自由度があるのではないかと仰ってました。カナダと日本では「議論のスタイルが違う」とおっしゃいます。日本は聞き上手だけれど、学生に「質問ありますか?」と聞かない限り、話し始めないかなあ、とおっしゃっていました。日本にいても異文化を感じるということができるよ!という話では、方言から食べ物の違いまで(「ちくわぶって何だろう?ちくわと違うの?」など)会場では議論になりました。

<おわりに:すぐそばにある自分を学ぶ>

 異文化を学ぶということは、留学先のことを学ぶのだけではなく、実は自分について学ぶことなんだ、とデービス先生は指摘します。留学中、色々なことに直面する時、はじめて「自分はそれをどう思っていたのか」と自分と議論し、そのとき実は初めて自分のことを学ぶのだ、と印象深い言葉をおっしゃいました。

 さまざまなバックグラウンドを持つ研究者や参加者がドリンク片手に語り合う分野融合・分野横断のコモンズカフェ。みなさんのご参加をお待ちしています。次回の開催は来年度4月を予定しています。お楽しみに。

構成と文章 岡部(監修 当日ホスト役[LA阿部・LA村田陽])

 

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