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COMMONS CAFE

Date:2014.05.29

[第5回]同志社大学 社会学部 浦坂純子「「計画された偶発性」をものにする-流されず,逆らわず,のキャリアデザイン指南-」

2014年5月29日、第5回目のコモンズカフェが開催されました。

今回のコモンズカフェでは、同志社大学社会学部の浦坂純子先生をお招きし、「『計画された偶発性』をものにする-流されず,逆らわず,のキャリアデザイン指南-」というタイトルでお話しいただきました。前半30分は、先生の経験などを踏まえたお話を聞かせていただき、後半30分は参加者からの質問に答えていただく形で進められました。

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開始時刻を前に、参加者が続々と集まり、それぞれ、学部・学年と氏名を書いたネームプレートを作り、和やかな雰囲気でコモンズカフェがスタートしました。様々な学部から、1年生から4年生、大学院生が集まりました。なかには、京田辺キャンパスから来られた参加者もいました。冒頭に、今回のコモンズカフェへの出演経緯をお話しいただき、先生も、ご自身のホームページで告知をされ、今回のコモンズカフェをすごく楽しみにしておられたそうです。今回は、レジュメを作成して、参加者に配布していただきました。

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本題に入ります。まず、参加者に対し、「計画された偶発性」(Planned Happenstance)という言葉を聞いたことがあるかと投げかけられました。そもそも、「計画」と「偶発性」は相容れないものであるが、想定外のこと(偶発性)をどういう風に前向きに捉え、活かしていくかを考えることであるという説明がありました。つまり、「計画された偶発性」とは、「思うようにいかなかったこと、思いがけないことを、これでよかったと思えるようにすること」であり、こういうことは身の回りにたくさんあるはずです。これまでの人生を振り返って、棚卸しをして、これから先の人生を考えていく。今日、この場(=コモンズカフェ)にいることが、まさに「計画された偶発性」になるかもしれないということでした。

ここで、先生から「子どものころ、将来何になりたかったか?今でも、その夢を追いかけているか?」という投げかけがありました。先生自身、中学・高校の時には、周囲の期待にも後押しされ、思い描いた夢があったそうですが、自分の中から出てきたものではなかったので、勉強に対する姿勢も甘く、志望校に進学できませんでした。1年間仮面浪人するも失敗し、大きな挫折を経験されました。これが先生にとっての第1の「思うようにいかなかったこと」でした。

2年生から大学に通うようになり、事務室に履修相談に行った時に、第2の「思いがけないこと」が起こります。1年間で語学等の単位を全部取らないと3年生に進学できず,留年することが明らかになるも、それさえクリアできれば3年間で単位を取って卒業できる可能性があることが分かりました。そこで先生は、3年間で卒業すると決意されたそうです。「たまたま経済学部に入学したけれども、不本意なままで終わらせたくない。経済学部で勉強してよかったと思えるようになりたい」と考え、「経済学を必然にする」という道を選ばれました。学んでみて、経済学も面白いと思えるようになったものの、詰め込みで勉強しただけで社会に出てやっていけるのか、10年先も20年先もやっていけるのか、と自信が持てず、さらに力をつけたい一心で大学院への進学を決意されました。失敗しても気持ちを切り替えて、落ち着いて目先のことから始めてみる。田辺聖子さん(作家)のおっしゃる「気を取り直す才能」が大切というのはその通りで、3年間で単位を取るために頑張らざるを得ない状況に置かれたことが、経済学の面白さを見出し、大学院進学にもつながったそうです。「普通の大学生らしい学生生活が送れなかったので、失ったものは多いけれど、今につながるものも確かにある」とのことでした。

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大学院進学後は、いろいろと調べたりすることが楽しく、修士論文をしっかり書こうと決心されたそうです。ここでも、「思いがけないこと」が起こります。データ整理のアルバイトを通じてお世話になった他大学の先生が、修士論文にも丁寧にコメントして下さったそうです。その頃は、歴史的なことを、データを用いて分析することに興味があり、その後、博士課程に進学されました。博士課程進学後、さらに新たな「思いがけないこと」が起こります。雇用や労働に関する共同研究の機会が与えられたものの、それまで縁のなかった分野だったので、自分の専門ではないと躊躇したところ、「これが自分の専門と言えるほどのものがあるのか」という意味のことを問われたそうです。雇用や労働の研究は、多様な切り口で時代を映し出すことのできる分野であり、蓄積の少ない院生が「自分の専門外だから、やらない」というのは違うのではないかと思い、その共同研究に参加することになりました。結局それが、現在の先生の専門になっています。キャリアの節目では何らかの決断を迫られるけれど、決断したらしばらくは流れに身に任せ、その流れの中でやるべきこと、果たすべきことに全力で取り組むことが、次の「思いがけないこと」を導くのではないかということでした。

その後、「思いがけず」松山大学の教員公募に応募し、専任講師として採用されました。ですが、これまで授業を担当したこともなく、家を離れるのも初めてで、就職できてうれしい気持ちと同時に、不安もいっぱいだったそうです。その時、支えとなったのが、新聞のコラムで読んだ小林一三さん(阪急電鉄創始者)の「働けばよい、それから先は運命だ」という言葉や、その当時、探偵ナイトスクープでインタビューされていた、定年退職後に再就職した方の「今ここにいることが自分にとってベストだと思って働いてほしい」という言葉でした。近年、渡辺和子さんの『置かれた場所で咲きなさい』(幻冬舎、2012年)という本がベストセラーになりましたが、「なぜ自分がこの場に置かれたのだろう?」と思うことは誰しもが経験することで、「置かれた場所で咲きなさい」という言葉が多くの人の心に響くものだったのではないかとおっしゃっていました。

「歩めなかった別の人生が光り輝くものであったかもしれないけれど、節目節目で必死に考え、進むべき道を自ら選び取っていく。そうすることで、どんな人生を歩むことになっても、自分自身が納得することができる。今までを振り返り、これからどうするかを改めて考えていきましょう」とまとめられて、先生のお話は終わりました。

続いて、質疑応答の時間になりました。参加者から多くの質問が寄せられました。その中から、一部をご紹介します。

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「ある程度先のこと(=将来のこと)を考えるが、その判断を行う際の基準は何か?」という質問に対しては、「基準は時々によって変わり、自分の中から出てくるもの、自分なりに生み出すもの、その時の状況も加味されるのではないか」とのことで、「今の自分に何ができるか。与えられた制約条件の中で、ベストを尽くすことが大事」とおっしゃいました。

「計画された偶発性は、チャンス以外の出来事も入るか?」との質問に対しては、「リスクや失敗も当然あり得る。自分の周りには、良いことも悪いことも含めて可能性がたくさんある。同志社に来たからやれること、できることを考えてみると、目の前に見える景色が変わってくる」とおっしゃいました。

また、参加していたキャリアセンター所長からは、「大学生は学問をしてほしい。学部で勉強することを企業は望んでいる」とのお話があり、先生からは、「一生懸命目の前のことに取り組むことで、自分や自分の中の変化を認識できる。人は変われると信じている。最初からあれこれ決めつけず、周囲の期待を意識し過ぎることなく、いろいろな可能性に対してオープンであること。否定しないこと。やってみてダメだったら、そこから学んで次に進んでいけばいい」とコメントをいただきました。

「自分の置かれた環境で頑張る方法と、大きな目標に向かって突き進む方法があり、自分の中では後者を選んでしまうのだが、この点についてどう思うか?」との質問に対しては、「方法として2つに分けられるものではなく、自分自身のビジョンを大きく掲げて、それに向けて一心に努力するのは素晴らしいこと。ただ、それがハッピーエンドにならなかった時にどうするかであり、紆余曲折から学ぶこともある」とおっしゃいました。また、「夢をかなえた『点』だけを見るのではなく、過程を見ることで、自分の人生を大事にできる」とご意見をいただきました。

定刻でコモンズカ05295フェは終了となりましたが、その後も、ほとんどの参加者が、引き続き先生とお話をされていて、参加者の熱心さを感じました。現在、自分の置かれている状況に納得できない方もいるかもしれませんが、今、目の前にあることに一生懸命に取り組むことで、得られるものが多くあるのではないかと実感しました。

教員と学生がお茶を飲みながら、ざっくばらんにお話ができるコモンズカフェ。今後は、どのようなお話を聞くことができるのでしょうか。次回もお楽しみに。

(文責・大平)

追記:

浦坂先生より、社会学部産業関係学科のHPの「教員コラム」へ当日の様子を紹介いただきました。下記のリンクをご覧ください。

(同志社大学社会学部産業関係学科HP) COMMONS CAFE<コモンズカフェ> 2014年6月10日掲載

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