Date:2014.04.23
[第4回]商学部 百合野正博「大学は知的ワンダーランド」
2014年4月23日、第四回目のコモンズカフェが開催されました。
今回のコモンズカフェでは、同志社大学商学部の百合野正博先生をお迎えし、「大学は知的ワンダーランド」というタイトルでお話しいただきました。前半30分は百合野先生の経験などを踏まえた大学での学びに関するお話を聞かせていただき、後半30分は参加者からの質疑応答にお答えいただくという構成です。
開始時刻を前に、一人、二人と参加者が集まってきました。先生は、参加者一人一人に対して「学部はどこ?学年は?」とお聞きになります。1年生から4年生に至るまでの、多種多様な学部の参加者を前に、和やかなムードでカフェが始まりました。冒頭で、今回のカフェへの出演に至る経緯をお話いただきました。百合野先生には今回のようなイベントはもちろんのこと、学会発表や論文執筆、学内の役職に至るまで「頼まれたことを全て引き受ける」というポリシーがあります。それを踏まえて、やや内向的な現在の学生に対して「どんなこともまずはやってみることが大切」というメッセージを投げかけてくださったところでカフェが始まりました。
今回のカフェを通じて印象的だったのが、百合野先生の”同志社愛”です。ご実家が今出川キャンパスのすぐ近くという環境でお育ちになった先生は、1969年に同志社大学商学部へ入学されて以降、同志社一筋で歩んでこられました。ご自宅からあまりにも近すぎるという理由から「どうにかして同志社以外の大学へ行きたい」という思いが強くあったということでしたが、お祖母様の勧めもあって同志社大学入学を決断されたそうです。ちなみにお祖母様以外のご家族は全員、学費の安い国立大学への進学を勧めたのだとか。しかし、この出来事が、のちに同志社の名物教授(日本経済新聞2006年2月20日朝刊より)と称されるようになる百合野先生にとっての大きなターニングポイントとなったのです。
当時の商学部では、必修科目がほとんどなく、ゼミ中心のカリキュラムであり、自分自身で学習を設計することができるという点に魅力を感じ、”自由な空間”としての同志社大学の良さを実感されたそうです。また、心なしか小声で「学生の頃は、大学教員を信用しなかった…」とも話しておられました。「大学教員は各分野の専門家であるが故に、それ以外の知識等が欠如しているのではないか?」「各教員が専門としている学問は、本当に社会の進歩に役だっているのか?」といった疑問を、時には先生自身が直接大学教員に投げかけたり、自問自答したりしたそうです。そして、辿り着いた答えは「我思う、故に我あり(デカルトのコギト)」に近いものだったのです。それを踏まえた上で、学部・学科を超えて、自分が関心を持てる話をしてくれる先生を探して講義を受講するのがオススメというアドバイスをいただきました。百合野先生がおっしゃる”知的ワンダーランド”としての大学とは、自分自身の関心を掻き立てられる人物や学問との出会いが沢山詰まった場所なのです。学生は学外での発見や経験に目を向ける傾向がありますが、大学という意外と身近なところに思わぬ出会いがあるかもしれません。そんな新たな出会いを探し出すのは学生自身であり、知的ワンダーランドとしての大学を活かすことができるかどうかも学生自身にかかっているのではないでしょうか。
突然ですが、皆さんはチック・コリアというミュージシャンをご存知ですか?(私は知りませんでした…。) 百合野先生は学生時代のある日、友人から「チック・コリアっていいよね…」という何気ない会話を投げかけられたといいます。しかし、チック・コリアが何なのかがわからなかった当時の先生は、無性に悔しい思いをしたそうです。「あいつが知っていることを、自分が知らないとは…」今では”ググる”と知りたい情報が瞬時に手に入れられますが、当時はそんなことできません。では、百合野先生はどういう行動をとったのでしょうか。まずは、その友人の話に出てくるということは、音楽に関することではないかと推測を立て、急いで出町のレコード店へ駆け込んだそうです。そこで隅々から探した結果、”チック・コリア”と書かれたLP盤 (恥ずかしながら、何のことだかピンときませんでしたが、レコードのことですね!) を発見し、チック・コリアがミュージシャンであることを知ったのだといいます。(ちなみに、チック・コリア氏の公式HPはこちら→http://chickcorea.com/)「知らないことに対して恥かしい思いをしていたため、必死になって知ろうとしていた」と百合野先生は当時を振り返っておられました。
「人と同じ道へ進まない」百合野先生の人生観を表す最も象徴的な言葉です。大学入学時の1969年の選択から、先生は既にそんな考え方を持ち合わせていたのでした。当時の同志社大学のいわゆる”看板学部”は経済学部だったにも関わらず、公認会計士になることを夢見ていた百合野先生は経済学部を蹴って商学部へ入学されたそうです。さらには、カフェ当日、先生はご自身のノートパソコンも例にして、次のエピソードを語ってくれました。どうやら、先生は長年のMacユーザーだそうです。今でこそ、Macのパソコンを使う人は増えましたが、先生はWindowsが圧倒的なシェアを誇っていた時代からMacを使い続け、今までに450万円ほどを投資したのだとか…。ここで一言、「株に投資しておけばよかった。会計学が専門なのに」と冗談を飛ばし一同の爆笑を誘います。ちなみに、Appleがどん底だったとき、仮に同額を株に投資していた場合、おそらく20億円程度の利益を得ていたのではと冗談を飛ばされていました。
「確かに、多くの人と同じ道を進む方が楽なのかもしれない。しかし、あえて人と違う道を進むことによって、今まで知り得なかった新しい道が見つかるかも」と百合野先生はおっしゃいます。学部選択やMacユーザーとしてのエピソードに加え、皆がセイコーの時計を買えばシチズンの時計を、皆がトヨタの車を買うならホンダの車を買うなどの例を挙げられていました。同様に、同志社大学創設者の新島襄も、人とは違う道を邁進し、独自の道を切り拓いた人物でありました。武家に生まれた新島は国禁を犯してアメリカへと渡り、そこで学んだことを活かして牧師になると思いきや、結果的に現在の同志社大学を創設するに至りました。信念を持って、人と違う道を突き進むという冒険心は新島襄という創設者が抱いていた精神であり、その精神を継承し、現在の学生もあえて人と同じ道を進まない選択をしてもいいのではないかという考えに百合野先生は非常に親近感を覚えるのだそうです。
休憩後の質疑応答の時間には、参加した学生から積極的に質問が投げかけられました。マインドマップの有効性を問う学生の質問に対し、先生は本の読み方に関する話へと発展して返答されました。また、「最近の学生は主体性がないと批判されるが、それを育ててきたのは従来の大学の姿勢もあるのではないか、大学側こそ変わる必要があるのではないか」といった鋭い質問に対しては”諸悪の根源は文科省にある(!?)”といった先生の持論も展開されました。(詳しい内容は、参加者だけの秘密です!) 他にも様々な質問が飛び交いましたが、中でも印象的だったものを一つ紹介したいと思います。
将来、起業家を目指しているという男子学生は、ゴールデンウィーク休暇を利用しシリコンバレーに足を運び、何人もの現地の日本人起業家に直接会って話を聞く予定だといいます。(しかも、その日本人起業家の一人が百合野先生のゼミの卒業生であるという、当日偶然判明した思いもよらぬ繋がりが!) 先生はシリコンバレーで起業したゼミ生の名前を即座に思い出し、「あいつによろしく言うといて」とさらりと返答されます。そして、「人と人のリアルな繋がりの大切さに気づいて欲しい」と語られました。同じ学生の「帰国日程を伸ばすと授業にひっかかる可能性が」という質問には、ちょっとここでは書けないお返事も…。また、カフェの間に何度か言っておられた「講義だけが『勉強』じゃない。もっと同志社生に『勉強』して欲しい」という言葉もそれを物語っているのではないでしょうか?
人と人とのリアルな繋がりが大切!学部を超えて教員と学生がリアルに繋がることができるコモンズカフェ!これからどんな先生との繋がり、学生同士の繋がりが生まれるのでしょうか?ここでしか聞けないホットなトピックを手に入れたいあなた、是非ともコモンズカフェに足を運んでみてください。
(文章:前田)